
![]() |
タイトル | 学校の階段 |
| 著者 | 櫂末高彰 | |
| イラスト | 甘福あまね | |
| 出版 | ファミ通 | |
| 発売日 | 2006年1月 |
| 執筆者:jade | 評価:A |
| 高校生活を楽しく送れるラク〜な部活に入るため見学に余念のない神庭幸宏は、ある日、校内を走り回る「階段部」なるものと出会う。 学校非公認、邪魔もの扱いの部にムリヤリ体験入部させられた幸宏だったが、ひたむきに「階段走り」にかける部員たちの姿に自分の中に芽生えた欲求に気づく。 高校生の「若さ」と「青臭さ」を描いた第7回えんため大賞「優秀賞」受賞作。 目新しい設定が評価されたインパクト勝負の作品かと思いきや、なかなかどうして文章力や構成力がしっかりしてますね。ストーリーも無駄に熱いし、設定も細部にまでこだわってるし、予想を遥かに上回る面白さでした。 目につく粗は主人公が階段部に固執する動機が弱いのと、二つ名がダサい(笑)くらい。 新人にしてはかなり完成度が高い作品ですね。 中でも注目に値するのは階段部の設定の細かさ。 階段部は単純に階段を走り回るだけの部活ではなく、校舎の一階から四階までを駆け上がり、指定の場所にタッチして戻ってくる早さを競う「ショットレース」、校舎の端の階段から上がり、四階の廊下の反対側までを走って階段を降り、最後に一階の廊下をスタート地点まで戻ってくる「スタンダード」、上がるべき階段と下りるべき階段の最低数が決まっており、通過すべきポイントをクリアすればルートは自由な「ラリー」という三つのレースが活動のメインになっています。 「ショット」・「スタンダード」はともかく、「ラリー」の発想は非常に面白いですね。 ルートが自由でも条件が決まっている以上、最短ルートというものが存在するわけですが、最短ルートを通れば必ずしも速いというわけじゃありません。 なぜなら最短ルート上で他の部活が活動していることがあり、曜日や時間帯によって最短ルートが必ずしも最速になりえないんですよ。それゆえ、情報・読み・駆け引き、そして運といったファクターも勝敗にかかわってくるわけです。 言われてみればなるほどと思いますが、架空の部活に対して普通はここまで想像できないですよね。 また、階段部の活動にあたり迷惑を被る人や快く思わない人など、実際に階段部が存在すれば当然あるであろう周りの冷たい反応にも気を配ってきっちり描いてるのが素晴らしいですね。 それから登場人物一人一人に細かい設定が設けてあり、捨てキャラらしい捨てキャラがいないところも注目するところでしょう。 最も印象が強いキャラは部長と副部長。 “陸上部と生徒会にそれぞれ籍を置いていた部長と副部長がなぜ階段部設立に到ったのか?” 気になる過去のエピソードは何か事件があったことを匂わせるだけに留まり、この巻では語られません。 このエピソードは次回以降に持ち越しという形になるのでしょうが、こうした盛り上がる余地を残しながらも物足りなさを感じないくらい内容が充実している新人作品というのは非常に稀ですね。 新人賞受賞作のほとんどは賞をとるために書いたものなので、普通は1巻に全てが収まるように詰め込んでしまうものですが、この作品はまるでデビューしたあとのことも考えて書いたようにしか思えません。 階段部という特殊な部活を生み出したうえに、中身にこだわり細かな設定と様々なアイディアを盛り込んだ作者の発想力と創造力は優秀賞を受賞するに相応しい価値を秘めています。 続巻も非常に楽しみなんですが、個人的にはこの著者がどんな物語を紡ぐことができるのか可能性を見てみたいので新シリーズを希望しています。 |
|
| 学校の階段関連商品 | ||
![]() 学校の階段 |
![]() 学校の階段2 |
![]() 学校の階段3 |